PMTC
これまでの歯科治療の中心は、悪くなった歯を治療するという「治療先行型」でした。しかし「今ある歯を大切にする」という「予防歯科」の概念が世間に知れ渡るようになるにつれて、積極的に歯のクリーニングを行う患者様も増えてきました。今回は予防歯科のお話を中心に進めていきたいと思います。
予防歯科とは
冒頭でも触れましたが、予防歯科とは「今ある歯を大切にするための治療」です。虫歯になってしまうと、歯を削らなければいけません。一度削った歯は元には戻りません。また歯周病は、痛みなく進行していく病気です。歯が揺れ動き始めると、対処療法として一時的に揺れを止めることは出来ても、根本的な解決策にはならず、やがて抜け落ちてしまう確率が非常に高くなります。このようなことにならないために、歯科医院で歯を守るための処置を受けることが非常に大切になってくるのです。
PMTCについて
予防治療で受けることができる処置として、「PMTC」というものがあります。PMTCとは「Professional Mechanical Tooth Cleaning」のことで、歯科医師や歯科衛生士といった専門家が、専用の器具や薬剤を使って歯の表面を綺麗にすることです。歯科医院によりPMTCのことを「歯のクリーニング」と呼ぶこともあり、「PMTC=歯のクリーニング」という認識で良いと思います。
歯のクリーニングと聞くと、「歯についた汚れをきれいに取ってもらう」という感覚があるかもしれません。確かにコーヒーなどの嗜好物による日常的な着色や、タバコのヤニによる汚れなどは、歯のクリーニングにより落とすことができ、歯本来の色を取り戻すことができます。
しかし、PMTCの本来の目的は「日常の歯みがきでは落としきれないバイオフィルムを取り除き、健康な歯を維持する」ことです。日常の歯みがきだけではどうしても取りきれない汚れが、やがてバイオフィルムを形成し、歯周病などを引き起こす原因となってしまいます。日常のセルフケアに加え、歯科医院で専門的な施術を受けることで健康的な口腔内を維持することが、PMTCの最大の目的なのです。
PMTCの施術内容
PMTCは自費治療で、可能な限り歯石とバイオフィルムを取り除きます。そのため、保険治療で行う歯石除去とはメニューが異なります。歯科医院により流れや使う薬剤などは異なりますが、だいたいの施術内容は以下のとおりです。
1.歯科医師による口腔内のチェック
虫歯や歯周病はないか、また口腔内に異常は見当たらないかを確認します。問題がある場合は、原則としてまず治療を行う必要があります。
2.歯石除去
超音波スケーラーやハンドスケーラーを使って、全ての歯の歯石除去を行います。ついている歯石の量や場所によっては、まず『歯周病治療』として行う必要があり、一回で取り除くことができないことがあります。
3.歯の表面の研磨やフロスなどによる歯間のクリーニング
専用のブラシやカップを使い、歯の表面をツルツルに研磨します。研磨することにより、バイオフィルムを付きにくくする効果が高くなります。またフロスや歯間ブラシなどを使い、歯と歯の間の汚れを取り除きます。
4.必要に応じた薬剤などの塗布
歯の質や状態に応じ、薬剤やペーストなどを塗布します。主に使われるのは歯質強化のためのフッ素、エナメル質強化やミネラル補給のためのペーストなどですが、歯科医院により使われるものは異なります。
5.歯科衛生士による歯みがき指導など
必要に応じ、歯科衛生士が歯磨き指導を行います。磨き残しやすい部分やプラークが溜まりやすい部分の説明、ブラッシング指導のほか、患者様に合った歯ブラシ選びなど、患者様の口腔内に応じた指導を行います。
エアフロー
PMTCの他に、歯の表面の汚れやプラークを取り除く「エアフロー」という施術があります。エアフローは、水と塩の微粒子でできたジェットパウダーを歯に吹き付けて、汚れやプラークを素早く落とします。
ジェットパウダーを吹き付ける施術のため、痛みは感じませんが、知覚過敏の方はしみる可能性があります。また塩を使ったパウダーのため、高血圧の方は避けたほうがよいかもしれません。エアフローは歯の汚れを素早く強力に落とす作用が高いですが、歯の表面をツルツルにする研磨作用はありません。エアフロー後にPMTCを行うことがお勧めです。
歯の汚れだけを取ってほしい方に向いている施術と言えます。
なおエアフローは自費治療となり、歯科医院により価格は異なります。
PMTCを定期的に受けることで、歯の健康を守ることができる
定期的にPMTCを受けることで、健康な歯や口腔内を維持することが可能です。3ヶ月に1度のPMTCが、ご自身の歯の健康寿命に大きく関わると言ってもよいでしょう。またこのことが、ご自身の歯や口腔内に対するモチベーションを上げることが期待できます。ご自身の健康のためにも、是非定期的に受けるようにして下さい。